NO!ノーリード!!運命を変えられてしまった保護犬

保護犬

今でこそ街中で見かける事は少ないですが、人通りの少ない住宅街、公園や河川敷などではチラホラみかけるノーリードのお散歩。
環境省が定める条例によりノーリードの散歩は禁止されていますが、やはり守らない人は一定数います。
本日は某保護団体の田中さん(仮名)から寄せられた、実際に起きたノーリード散歩が原因の悲しいお話です。

コミュニケーションの取り方を知らない犬たち


田中さんの所属している保護団体は主に大型犬を保護しています。

大型犬を手放す人の多くは、子犬の時には可愛かったけど大きくなって世話をしきれなくなったというパターンが多いため、手放された犬は人や他の犬たちとのコミュニケーションの取り方を知らない子が多いのです。
子犬のころは家族全員に可愛がられ心から人を愛し、家族以外の人や他の犬との接し方を教えてもらえないままで、ある日突然捨てられた犬たちがどうなるかは想像できるかと思います。

コミュニケーションの取り方を知らないまま捨てられた犬たちは、保護されても人との生活になじめないうえ大型犬ともなると家族探しにとても苦労します。
それでも保護団体のメンバーは時間をかけてゆっくりと犬との信頼関係を築き、新しい家族のもとへ行けるよう犬と一緒に最大限の努力をしていました。

そんな中、田中さんが担当になったのは6歳になるシェパートでした。

憶病なシェパード

皆様ご存じの通り、シェパードは警察犬にもなる賢くて強い犬種なので、本気で噛みついたら人の指なんて飛んでいきます。

田中さんは元ドッグトレーナーだった為難しい犬を進んで担当していましたが、今回のシェパードもなかなかなものでした。

リューと名付けられたそのシェパードは、犬が虐待されているとの通報で保護された経緯があり、非常に憶病で人間不信な子でした。
他の犬や猫にまでも異常に怖がって尻尾を内側に巻いてしまうほどで、田中さんがリューの頭をなでる事ができたのは田中さんの家に来て半年が過ぎた頃だったそうです。

最初はどうなるかと思ったリューも、一年を過ぎるころにはトイレの躾も完璧。お座りやマテもできるようになり、警察犬のように宝物探し(家の中で物を探す)が得意になるほど別犬のように元気いっぱいになりました。
しかし、どうしても克服できない事がありました。
それは他の犬との接触です。
特に小型犬に怯える性質があり、散歩中に飛んできた白いビニール袋を見ておしっこを漏らしてしまうほどでした。

噛ませ犬の過去

田中さんはこのような怯え方に覚えがありました。

数年前に担当になった傷だらけの大きな犬で、闘犬の噛ませ犬(※1)のような役割をさせられていた子でした。
心の傷を癒すまで長い年月が必要で、老犬だった為に新しい家族を見つける事を断念して田中さんの家で看取ったのです。

リューもあの子と同じような扱いを受けていたのかもしれない。
そう思うと、あの子の分も幸せになってほしいと強く思い、無理に新しい家族を見つけなくてもリューをうちの子にして世界一幸せにしてあげたいと思ったのでした。

※1 闘犬において調教する犬に噛ませて自信を付けさせるためにあてがわれる弱い犬のこと

天国から地獄へ


保護団体のメンバーからも祝福を受け、リューが田中さんの家族になった日の事でした。

いつもの散歩ルートに小型犬を散歩している若い女性がおり、田中さんはリューからの視界を遮るように通り過ぎようとした時です。
その子犬が目の前まで走り寄ってきた時になって、やっとノーリードである事に気づきました。
リューは突然現れた子犬に怯え、ギャンッと大きい声で鳴いて田中さんの足の間に顔をうずめ、田中さんは慌ててリューのリードを引き寄せ、小型犬を引き離そうと飼い主の女性に言いました。

「早く離してください!離れてくれださい!!!」

必死に訴えても飼い主の女性は笑いながら「大きいわんちゃんなのに怖がりね」と言うだけで携帯で写真を撮るような動作を見せ、小型犬は興奮しながらリューに何度も飛びつきました。
そして最大の悲劇が起こってしまったのです。

恐怖の限界に達したリューが田中さんの足の間から顔を出し、田中さんによじ登ろうと必死に手をかけ、田中さんもリューを抱き上げようとした時、スローモーションのようにリューの口が開き、泡を吹きながら両足を限界まで伸ばすように痙攣して、そのまま意識が無くなり亡くなってしまったのです。

二度と戻れない日々

田中さんはリューの最後の目を忘れる事ができないと言います。
最後に見たリューの目は、きっと保護される前の家で噛ませ犬のような扱いをされていた時にしていた目なんだと、あの恐怖をもう一度味合わせてしまったんだと、心臓が止まるほどの恐怖を与えてしまったんだと、絶対に自分を一生許せないと。

あの時あの子犬を蹴り飛ばしていれば、あの日あの道を通らなければ、自分がリューの担当にならなければ、自分の家族にならなければ、リューは今でも笑顔で幸せに暮らしていたかもしれない。
一生ぬぐう事のできない後悔と過ちを、もう誰にも感じてほしくない。

最後に

リードは犬を不当に拘束するものではありません。
リードは犬の命綱です。

リードを付けるのは犬が可哀想だと言う方がいらっしゃいますが、可哀想なのはノーリードで散歩させられる犬の方です。
自分ちの子はリードを付けなくても大丈夫、という方がいらっしゃいますが、人間界での条例すら守れない人が何を根拠に”大丈夫”と言えるのか不思議でなりません。

リードは人の為ではなく、人と一緒に生きていく犬の為です。
みんなでマナーを守り、大切な家族と安心して過ごせるような世の中にしていきたいと心から思いました。

Special Thanks

事例提供:田中さん
messag:りゅうの事はとても辛い出来事でしたが、不幸な子を一人でも救いたいと思い保護活動を続けております。どうかみなさま、ノーリードでの散歩を行わないようお願い申し上げます。
イラスト提供:inabinoohoiratsumeさん
messag:小さな絵画教室を営みつつイラストの仕事をしている2人の息子の母です。
過去に3匹の保護犬と1匹の保護猫と暮らしていた経験があります。
今は家族にアレルギーがあって、動物と暮らせないのですが、地元地域猫の活動を出来るだけ協力していきたいと思って、見守っています。